某文庫新人賞のころ | 心に翼、黒くてカギ爪つき by 麻生新奈

心に翼、黒くてカギ爪つき by 麻生新奈

読んだ小説、書いた小説の話題が、メインです。

 第7回「聖剣将来」掲載しました(07/06)。
⇒『異血の子ら』


 『異血の子ら』の執筆を開始したのが2006年、スピンアウトの短編はどうにか仕上がっていくものの、本編のほうはなかなか進みませんでした。
「どうも、私という人間は、『締め切り』がないとダメらしい」
 ……そこで。某文庫の新人賞に出そう、と決めたのが、2010年のことでした。

 その際、提出前に原稿を読んでくださる方を、ブログで公募しました(このブログではなかったですが)
 実は私は「事前評」のある同人誌で育っていました。〆切前に同人の所属メンバーに原稿を見てもらうのです。それが有用だということは骨身にしみていました。それを、ネットでやってみよう、という試みでした。

 閲覧パスワードつきのブログを用意し。原稿を、20章に分割し、1章ずつ、記事として掲載。これに「ご指摘は、コメント欄にお願いします」という形で、いただいたコメントと対応状況を全員が把握可能、という体制を考えました。
 募集はかけたものの。下書き原稿の仕上がりは、ぎりぎりでした。結局、約1ケ月間、およそ2日に1度ペースで、1回原稿用紙20枚超の記事を、ただ読むだけではなく、チェック内容のコメントまで書いていただく、という、ものすごいハードスケジュールになりました。

 正直にいうと、この「公募」で応募していただけるのは、せいぜい一人か二人だろうと踏んでいました。ところが、驚いたことに、《Yahoo》ブロガーR氏・K氏・M氏・T氏、小説系J氏・N氏、これに有希之武氏をあわせて、総勢7名という厚い協力体制をいただくことになりました。
 今だから、さらに正直に言いますが。当初、コメントはいただけたりいただけなかったりで、1記事に1人チェックをいただければ御の字だと。そう思っていました。

 ところが。最初から「多忙なので、全部は無理かも」という前提だった方以外は、最初から最後までおつきあいをいただきました。しかも7人の方々には、それぞれ、得意分野(?)のようなものがありまして。誤字脱字が強い方、「カギカッコ」の使い方やスペースを入れる入れないのチェックが厳しい方、設定的に不自然な部分の指摘をしてくださる方、ルビ抜け†をきめ細やかに見てくださる方、などなど、複数の方に、違う視点から多面的に見ていただくことができた。拙作が毎日毎日少しずつ「マシ」になっていく、という手ごたえがありました。
 逆に言うと、直すべき箇所は、大変に多かったということです。誤字脱字も思った以上にありましたし、自分のキャラの名前を取り違えていたりしました。(姉と妹を取り違えたり、中年sを取り違えたりw)

 思い出したのは「モヒカン族」の「誤字脱字の指摘は人格否定とは思わない 」という1行。こういう行が入るということは、「誤字脱字の指摘を人格否定と感じる」人もいるということで。そういう方だと、(自分から依頼したといっても)毎日誤字脱字指摘が入る1ケ月というのは、心理的にキツイかもしれません。……あ、誤字脱字がなきゃいいのか。ははは。

 1ケ月半の推敲期間に上げた記事が、小説20章分+手直しや連絡事項で、合計35記事。これについたコメントが306ケ。これは「ここまで対応しました」という麻生(阿檀)の1行コメントも含みますので、麻生(阿檀)以外のコメントだけカウントすると195ケ。私としても、複数の方にこれだけ厚い事前評をいただいたのは、初めての体験でした。

 最終的に投稿した原稿は、400字詰め原稿用紙約530枚。360ページ厚さ20mmの文庫分に相当するものとなりました。
 本当に楽しい、充実感がある1ケ月半でした。協力いただいた方々には、本当に、何度お礼を申し上げても足りないくらいです。


- - - - -

 今回、この連載を始めて、当時協力をしてくださった方から、感想のメールをいただきました。懐かしい、と書いていただいていました。私は、当時から今まで、けっこう長いこと、作品を玩りまわしているので、まだ「懐かしい」と言える境地ではないのですが。あの1ケ月半のことは、懐かしいです。……公開が伸びに伸びた罪悪感もあって、一時期は懐かしむ気持ちも磨り減っていたのですが。公開を始めることができて、やっと心から懐かしいと思うことができるようになりました。
 一時期、ちょっとドンづまっちゃっていた理由は、また別の機会に書こうと思います。